News

熱処理とは ~「焼き入れ」について~

技術情報

曽田製作所では、素材調達から熱処理・機械加工まで社内で一貫生産をしております。昭和10年の創業後ほどなく、小松製作所の部品製作を請け負い始めましたが、当初は一貫生産ではなく専ら機械加工を行っていました。
昭和30年ごろにはブルドーザの土砂を掬い上げる「ブレード」部分の穴あけ加工などを行っていましたが、熱処理も一緒にやってほしいという要望をきっかけに、熱処理を含めた一貫生産への道のりの第一歩を踏み出し、その後、高周波炉導入を経て素材調質や研磨なども取り込んだ現在の一貫生産体制の構築に至ります。

今回はその一貫生産への重要な転機となり、且つ曽田製作所の一時代を築いた「熱処理」についてのお話です。

熱処理とは加熱や冷却によって原子や結晶を操作し、鋼材をいろいろな性質に作り込むことです。素材の持つ機械的、物理的特性と品質は熱処理によって大きく左右され、熱処理が上手くいかないと、通常材料よりも品質が低下する場合もあります。そのため、熱処理は鋼材を用いたものづくりにおいて非常に重要な技術であります。
 熱処理は、素材メーカーでおこなわれている処理や、部品加工の途中に行われるもの、仕上げ前に施すものなど、部品作りの各工程に組み込まれています。

なかでも素材の調質で行われる熱処理を「焼き入れ」、「焼き戻し」といいます。
「焼き入れ」とは高温状態から急冷することで、素材の硬度を向上させる処理のことです。鋼材の原子は室温ではフェライト結晶と呼ばれる構造(体心立方格子)で存在します。これを材料や成分により多少変動しますが、約723℃以上に熱することでオーステナイト結晶と呼ばれる構造(面心立方格子)に変化します。このオーステナイト結晶の状態はフェライト結晶と比べ、固体の状態でありながら添加した炭素などを結晶内に取り込むことができます。フェライト結晶のままでは結晶内に取り込むことが出来ず、添加した炭素などは鉄の中に均一に混ざり合いません。
 このオーステナイト結晶の状態になった鋼材を水や油に浸けて急冷することで体心立方格子の中に炭素を取り込んだマルテンサイト結晶と呼ばれる細長い構造になります。マルテンサイト結晶の特徴である、炭素が閉じ込められた独特のひずんだ結晶の形が成形加工や切削の際に抵抗となり、焼き入れの硬さをもたらします。

この時、急冷せずにゆっくり冷やすと、マルテンサイト結晶にはならず元のフェライト結晶に戻ります。実験室で使われるような小さな金属片などであれば温度がムラなく伝わるため全体がマルテンサイト結晶となり、均一の硬さを得られますが、実際のものづくりの現場では熱処理を行う鋼材は大きく、様々な形状をしているため、各部位によって表面の温度低下と内部の温度低下の速度に差がうまれます。この差が変形や破損などの重大な品質低下の原因を引き起こすのです。表面に比べてゆっくり温度が下がる内部にはフェライト結晶が増えるとともにマルテンサイト結晶が少なくなり、素材の硬度が不均一になる為です。

こうした現象を防ぎ、安定した性能を得るためには熱処理現場のノウハウの取得が重要となります。曽田製作所には創業以来80年を超える技術と信頼の積み重ねで培った高品質の製品を生み出す熱処理のノウハウがあります。
また、どんなに完璧な熱処理を施したとしてもどうしても避けられないごく僅かな歪みは一般的に機械加工で補正しますが、当社は、自社で熱処理と機械加工を一貫して実施しているため、あらかじめ歪みを考慮し、できる限り機械加工を少なくしています。これにより、機械加工の工数が削減されるばかりか、長期にわたり初期の形状が保持されやすい部品を製造することができるのです。